〔登壇メモ〕第2回OSPカンファレンス「県経済から脱貧困を考える―給与額が発するメッセージ」

登壇してきました。OKINAWA SDGsプロジェクト(OSP)のみなさんお疲れさまでした。クロストークでご一緒した花牟礼真一さん(かねひで総研)、真栄田一郎さん(マエダ電気工事)、吉永亮太さん(沖縄県商工労働部)、モデレーター日高春奈さん(うむさんラボ)ありがとうございました。

クロストークでご一緒させて頂いた花牟礼真一さんは、三井物産からかねひで総研へと最近県内紙面でよくお見かけしていて、マクロな視点からの経済成長についてお話していました。「稼ぐ力」っていうときのビジョンを明確に、っていうことと、とはいえ、産業別の指標を掲げるべきで一律の改善は難しいから現場の実情に合わせた改善をという話と、「3年で1万円」案については、富裕層の1万円向上と低所得世帯の1万円は違うんじゃないかって話をしていました。

マエダ電気工事の真栄田一郎さんは、とっても面白くて。「稼ぐ力」とか所得向上っていうのは「経営者の課題だ。雇われている人は、給料決められないんだから、もっといい経営をしよう!もっといい会社を増やそう」って話をしてました。以前から、ご自身が会社を継承した後に大失敗した事業のお話なんかを語っている記事を見ていたのですが、とっても気さくな方でした。クロストーク含めてお話して面白かったです。

モデレーターをしてくださった日高春奈さんは、登壇依頼を受ける時点で、私の最近の発言なども調べてくださっていて、「リストの本、仲間内で1冊ずつ買って読み回してますよ!」って感想までシェアしてくれて、本気で一緒に沖縄の議論進めたい!って感じがして依頼も超嬉しかったしMTGも円滑でした。すごい若手だった。

県の吉永さんは後述するので割愛。あそこに県の方が座る、のが凄いね。主催・うむさんラボの比屋根さんも言っていたけど「議論の途中でオープンにしていくこと」が重要で、そこに担当者が座るのは良い一歩だと思った。とはいえ、持ち帰って結局反映されていかないとなるとまた問題だけど、そうはならないような期待を感じさせる方でした。今後も万国津梁会議「稼ぐ力」委員会の議論を追いかけていこうと思えました。

本題・内容メモ

・琉球新報「平均給与が貧困ライン以下…なぜ?どうしたらいい?「沖縄SDGsプロジェクト」会議」2021年11月6日.    
 URL:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1419349.html

子どもの貧困や教育格差を研究する、日本学術振興会特別研究員の糸数温子さんは「平均値は高収入に引っ張られる。非正規の若者などの所得はもっと低い」と指摘した。公共事業で安価であることが評価される入札制度の問題も重視した。

・琉球新報「平均給与が貧困ライン以下…なぜ?どうしたらいい?「沖縄SDGsプロジェクト」会議」2021年11月6日. 

記事中にもあるように、ここ重要な点でした。
以下、私が話したことだけメモ。OSPや稼ぐ力委員会のこれまでの議論とか知らないので完全外野から3点指摘してきました。色々と考えたいことがあったんだけど、とにかく備忘録として書いておく。詳細は別途書くか喋るかしたいなと思います。

①「稼ぐ力」って謎。

  • どの規模・桁感で話してるか明示してほしい(ピカチュウで例えて会場ポカンよ!)
  • 沖縄県内総生産は4兆円強だが、その桁を変えるようなコンテンツを生み出す力という話なのか、それとも個別のひとりひとりが+10万円稼ぎましょうねっていう話なのか。率直にどういう話なのか良く分からないです。って答えました。
  • 県民の労働人口が751千人なんで、それを月に1万円上げると+75億くらい?それをどうにかしたいって話?

    (余談:「稼ぐ力」って何かなーって考えて、ピカチュウの帽子かぶっていったんだけど会場の年齢層とはちょっと合わなかったです!失敗!)

②なぜ、県の掲げる「3年で1万円向上」が不十分か

まず、クロストークの前に、沖縄県の子ども政策課・糸満さんから「相対的貧困」の説明がありました。その後に商工労働部の吉永さんから、記事にもあるように「沖縄県の平均給与月額は22万円だが、それ自体が既に相対的貧困ラインの23万円より少ない」と報告。相対的貧困率を下げるため「3年以内に1人当たりの月給を平均1万円上げる」と目標を説明」する時間がありました。
それを受けて「どう思いますか?」というフリがあったので以下、「正直、遅いし足りない」っていう主旨のコメントをしました。

  1. 六本木ヒルズのマックでハンバーガー食べようが、この辺のマックでハンバーガー食べようが値段は変わらないのに、東京だと時給が1100円で、沖縄は時給820円。280円も違う。280円×8h×20日だとしたら4万5千円ほど違うので、月に1万円の是正では、まず足りない。
    どう考えても、六本木ヒルズのほうが土地代高そうなのに、沖縄で商売すると労働者に還元できないなんて変じゃないか。その利ざやで儲けを増やすっていうのが「稼ぐ力」じゃないはずだ、と。
  2. そもそも「相対的貧困」というのは、可処分所得の「中央値」の半分以下のボリューム層を指して問題視しているのに、県の出してきた仮説では「平均値」で話を進めている。平均給与が22万円だから相対的貧困ラインの23万円に届いていない「1万円を上げる」というロジックだが、「中央値」はそもそも22万円よりも低く、さらに言えば、この「平均給与月額」の中には、「正規・非正規」まるめて「平均給与」なので、実態とかなり乖離した想定になっている。よって「1万円」という設定・設計は「足りない」。
    ちなみに前述した4万5千円。これを×12ヶ月で、ボーナス1回分くらいになるので、非正規から正規に転換したらすぐに補填くらいにはなるのでは?とも話した。
  3. 2016年に「子どもの貧困」に注目が集まったとき(前段の基調講演では2016年1月29日の報道と県調査結果を報告していたが)、実は同じ時期に、子どもの貧困率だけではなく、「子どもがいない世帯の貧困率」、「ワーキングプア率」、「生活保護の捕捉率」の高さを指摘する論文とその報道もあった。
    つまり、県経済とは、低い賃金で働く人が支えるような経済圏になっていないか。沖縄の脆弱な労働市場・産業構造の歪さはずっと指摘され続けていたにも関わらず変わっていないのが問題だ。若者たちをマックジョブと呼ばれるような働き方へと追いやってしまうことも、それに見合った給与をもらえないから優秀な人材が流出してしまうことも変えなければ。
  4. 沖縄県は「相対的貧困率」を改善すると言っている以上、所得向上をする以外に数値が改善する方法はない。(それ以外のことでやってますと言っても改善には繋がらないということは有識者会議でも言ってきた)
  5. それから、安易に平均給与を上げるとかいう発想のとき、気をつけなければならないのは、ここに集まってる人たちのようなホワイトカラー層しか見えていないということだ。(だから想定が甘くなる)
    平均値は高収入の値に引っ張られるので、当然給与所得の高い層が上がれば全体として変わったように見える。それは、世の中いっぱんのホワイトカラーだけが改善していくことで、局所的に二極化・三極化してしまう。すると、分断が生まれて、より一層自分たちの周りは改善したのだから世の中で経済的に困窮している人など居ない(少なくとも自分の周りには居ない)という発想を強化するんじゃないか、そういうことを危惧している。と話しました。

理由は5点くらい喋りましたが、大きく分けると「事実認識の甘さ」「仮説設計の甘さ」「その後の展望の甘さ」だと思います。なんか、すごく分断を感じた。

③公共事業で安価を評価する競争的入札制度の改善について

この点は、以前から貧困対策や子ども施策を行う事業者(主にNPO)との契約額が(特に人件費が!)低すぎる問題について言及してきました。この延長でもあります。官がワーキングプア生んでる構造やめよー。

  • 前段で、県の吉永さん(この方すごい!捨て身!)が「しわよせの来ない県経済を」「よい経営をしている会社に認証制度を作る」という話をされたので、それを受けて「それは、かなり大ブーメランだと思うんですけど」と前置きした上で、だとしたら一番最初に改善する姿勢を見せなくっちゃならないのは、県の公共事業が「安い方へ安い方へ」を選択するような入札方法になっているのを変えないといけないんじゃないかと話しました。
  • 安さではなく「よい経営」をして「認証」された会社に委託を優先していく、そうやって認証制度が活きてくる、そういう構想なんですよね?と伺うと、めちゃくちゃ頷いてました。また「今の入札方法では儲からないから公共事業を受注しないという選択をする企業すらある」とマエダさんもおっしゃってました。

 →この点は、非常に重要なポイントだと思っていて。ケインズ的に考えても、失業対策として公共事業に積極投資するのに民間に旨味がないなんて経済政策・貧困対策として失敗してる。沖縄は、公共事業によって建設業へお金を落としても、それが全然健全な経済活動の促進になっていないんじゃないかって問題があるわけで。県外企業によって受注が取られてしまっている(利益が外に流れているんじゃないか)とかも含め。これはまた別の機会に書く。

最後にひとこと。

と言われたので、話したこと。共感を広げたいというフリがあったので。
ここに集まってる人は経営者もいるが、ほとんどは労働者だ。であるならば、まずすぐに改善できることとして「沖縄の貧困をなくす」とか「みんなの給与を1万円あげる」とかは自分のアクションとして認識しにくいはず。であれば、自分の職場の環境は働きやすいのか、同僚に想いを寄せてみるのはどうか。「育休・産休取りやすいか」「有給休暇などはしっかり整備されているのか」「上司に給与交渉しやすいか、ハラスメント相談しやすいか」など、まずは自分の職場から、同僚と働きやすい会社づくりから考えてみるのはどうでしょうか。と話しました。

 →これね、企業もコロナ禍の助成金でね、それやったほうがいいって気づいたはずなんですよ。


終わって考えてること。

・「稼ぐ力」具体策として「最低賃金を上げる」「生活保護の捕捉率上げていくこと」などが「経済界」にも示されるほうがいいのになーと思う。同一労働・同一賃金も、もう少し理解が拡がるといいのに。今回、あんまり共通認識が拡がったという気はしなかったな。誰かしら何かしら持ち帰ってくれた人がいたら嬉しい。

・「稼ぐ力」かー。結局、よく分からなかった。だいたい「生きる力」もそうだし「人間力」もそうだし、「女子力」「コミュ力」も、意味分かんない。誰かが他人をコントロールしたい時に使う言葉のような気がする。または何かしら自分の現状は自分の能力によって獲得したものだ!と思い込みたい(思わないとやってられない)だけかもしれない。なんだろう。

・カンファレンスで「共感」という言葉が多様されたんだけど、交わされた論点って「共感」という前段階で、同じものを見てるっていう感覚がなかった。社会課題の共通認識を持つために必要なデータとか事実の積み重ねが共有されてこそ議論は進むし、そこに対話が生まれるから共感できたりできなかったりしながら物事は進むと思う。曖昧な社会認識や、想いとかで「共感」って広まっても、社会は良くなんない気がするよ。

・あと、めっちゃどうでもいいことなんだけど、入り口でお客さんに間違われて、会場手前で高校生に間違われて、それで「えーっと、えーっと、なんて説明したら良いかな」ってキョドってしまった。こういう時、上手に会場までたどり着く方法知りたい。

余談。「平均値」と「中央値」の話や労働統計の見方については、子どもの貧困対策有識者会議でも散々説明しているので、これはまた別の機会に書くとする。


  • 最後に、OSPカンファレンスでも「沖縄セーフティネット協議会」について紹介させてもらいました。
    ぜひ「かっこいいNPOどこにいるの?」と関心のある方、こちらへ
    :https://hinkyookinawa.wixsite.com/website

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