2021はじめて沖縄で子どもの貧困問題に関心を持った人が読んでほしい本10冊と次の5冊。

沖縄で「子どもの貧困」問題に関心を持ち始めて日が浅く、突然「何かしたい!」と立ち上がってしまった人に、「まぁまぁ、一度座って本読んだらー」とオススメしたい10冊、と次の5冊を考えてみた。

学習支援に行く学部1・2年生向け研修の依頼を受けたので、おすすめ文献リストを作成しはじめて、いやいや、それは指導教員がやるから要らんな~と思い至り。
でも、せっかく考え始めたので、冒頭の人向けリスト作りはじめてみたら意外と難航!

支援団体も研究者も「労働問題!人権保障!賃金!雇用形態!社会的排除!」えとせとらー
ルポだって溢れてるのに。
なぜかやまない「親の愛!自己肯定感!温かい食事!能力向上!根拠のない教育理論!沖縄は特殊!」

なぜなのかー

本は読まない・現場にも来ない、がなにかしたいって人の情報源が思いつかなくて、
試しにyoutubeで「沖縄 貧困」って検索してみたけど、醜悪で、そっ閉じ。

すれ違い続けてしまう私たちが「お、それ読んだ」で繋がれる日は来るのだろうか。

2021沖縄で子どもの貧困問題に関心を持った人に最初に読んでみたらと薦めたい10冊

1.ダレン・マクガーヴェイ(2019)『ポバティ・サファリ』集英社.
2.子どもの貧困白書編集委員会・編(2009)『子どもの貧困白書』明石書店.
3.金子充(2017)『入門 貧困論』明石書店.
4.大西連(2019)『絶望しないための貧困学: ルポ 自己責任と向き合う支援の現場』ポプラ社.
5 .ブレイディみかこ(2017)『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』みすず書房.
6.ブレイディみかこ・松尾匡・北田暁大(2018)『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』亜紀書房.
7.松岡亮二(2019)『教育格差』筑摩書房.
8.和田靜香(2021)『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』左右社.
9.キム・ジヘ(2021)『差別はたいてい悪意のない人がする』大月書店.
10.沖縄子ども総合研究所 編(2017)『沖縄子どもの貧困白書』かもがわ出版.

■選んだ理由

1.8.9は、無意識に、自分を「支援者側」に置き、対象者を操作可能なものとして扱おうとする人を見かけるので、(支援者の葛藤に思いを馳せ、現場にそういう人来るとホント疲労感パないから)選んだ。

2は、子どもの貧困元年2008年の3冊以降すぐに子ども・若者の置かれる現状について網羅的に論点が析出されている。3は、読みやすく分かりやすい理論的な教科書なので、2を深堀りする感じで。

4.5.は、「子ども」は「かわいそう」だから何かしてあげたいが親は悪者にしがちな人を見かけるので選んだ。子どもはいつか大人になる。私たちの社会は、誰かを排除しつづけたままでいいのか、子どもから大人まで地続きに考えるためにセットアップした。

6.は、単純に社会構造の問題とはいえ、何を語ればいいのさ、という人に向けて、これはどうだろう、というもの。よく「あいつらはお金もらいすぎてるから給料返して●●に使え」とか「ユニバーサルな支援って財源どこから」とかいう人に出会うので、例えばこんな話はいかがでしょうか、と思って選んだ。政策とか苦手だ、っていう人に。

7.は、新書で読みやすいのにデータでガンガン殴られるので、今の待遇を自分で掴み取ったと誤認して他人を追い立てる施策を作る人はガンガン殴られたらいいと思う。「機会」をうまい具合に獲得できる人の「生まれ」は偏っているという現実と向き合うことから。

8は、「貧困層の人は、もっと給料の高い仕事につけるように資格を取らせたり研修を受けさせましょう!」という人に出会うので、ほんとにそうですか?彼らの賃金が低いのは、彼らのせいなんでしょうか?と常々思ってしまうので、ちょっと立ち止まって考えませんかという意味で選びました。

10は、内容云々よりも、まず沖縄でなにかするなら誰が何を言って何をしてるのかくらい見たほうがいいんじゃないかと思って。

最初に読む10冊を数冊読んだ人に薦める5冊

11.阿比留久美・岡部茜・御旅屋達・原未来・南出吉祥(2020)『「若者/支援」を読み解くブックガイド』かもがわ出版
12.ミシェル・パンソン、モニク・パンソン=シャルロ(原案)、マリオン・モンテーニュ作・川野英二・川野久美子訳(2020)『リッチな人々』花伝社.
13.ジョゼ・ジョンストン、シャイヨン・バウマン、村井重樹・塚田修一・片岡栄美・宮下阿子 訳(2020)『フーディー   グルメフードスケープにおける民主主義と卓越化』青弓社.
14.斎藤幸平(2020)『人新生の「資本論」』集英社.
15.田中聡子・志賀信夫 編(2020)『福祉再考――実践・政策・運動の現状と可能性』旬報社.

■選んだ理由

11は、とってもいい。「若者/支援」関連本の「文献事典」!これは手元にあるといい。最初の10冊でこれを出すのはズルい気がしてしまったので11番目にしました。

12は、タイトルのとおり「富裕層ってどんな人」って本。ブルデュー理論のマンガ解説。とりわけ世代間再生産における「資本」概念を解説し、富裕層は富裕層に、我々をいつまでもこんな状態に留めおく社会システム、クソが!って話。「100分deディスタンクシオン」を読んだ人も多いみたいだし、突然『ディスタンクシオン』読むよりこちらを勧める。

13.は、食。私は、しばしば沖縄県内の貧困対策は「食」にまつわる支援に注目が集まる事が多いが、その食支援の表象はパターナリズムに鈍感すぎるのではないか、と考えている。ブルデュー的に言えば「必要な食べ物」から距離を取ることのできる人々が「生きるために食べる」人々を代弁しているかのように振る舞っていないか考えてしまう。さて、本書は「食を自分のアイデンティティやライフスタイルとして捉えるひとびと」を「フーディ」と呼び、彼らの卓越化戦略を考察している。遠回りかもしれないが、視点を拡げるために選んだ。

14、「SDGsは大衆のアヘン」という引きの強いイントロから始まる本書。そこだけでも、SDGsウォッシュと揶揄されるような上っ面だけの支援にならないよう耳が痛いところだが、もう1点、ダメ押しで、この現代社会において貧困対策と両立可能な「経済成長」とは何か、またそれは可能かを考えるために。

15、本書は一貫して「資本ー賃労働関係」へ注目することを説いている。沖縄の貧困問題を論じる人々への言及もある。私自身も、沖縄の貧困問題について話すとき、労働者の権利の問題として認識されにくいと感じてきた。その人の「生き方」「暮らしぶり」をカテゴライズして語ろうとする人にも出会う。そこで、最後の1冊はこれにしました。


他にも、重要な文献は山程あるけど。
難しすぎるのは初学者向けにならないし、
沖縄の貧困問題から離れすぎても分かりにくい、
値段が高すぎてもいけないし、
前提知識や専門用語の理解が必要なものも避けた。
エスノグラフィーも、筆者のメッセージと異なって「読みたいようにしか読まない」人が出そうだから
最初の1冊では薦めにくいと判断した。

学部生向けとは異なる選書、10冊+5冊。
考えてみたら、めちゃくちゃ難しかったです。


追伸:15冊読んで面白かったよ、という方へ
私が次に読みたい本、読まなきゃいけない本、買って手元に置いておきたい本、興味ある本、
ありすぎるので、誰か本をくださいの切実リストは、こちらです→「Amazon 欲しい物リスト
気が向いたら私にも買ってください!
もう手元にある本は、すごく良い本ばかりだから、またの機会に紹介します。

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